記憶混濁*甘い痛み*2
「ママぁ、つづき!はやくよお!」
クリスマスまで後3日とせまった日の夜。
友梨はリズの部屋で、彼女をベッドに寝かせながら、童話のスノーマンを読んで聞かせていた。
「はいはい。リズはスノーマンが大好きね」
友梨はそう言って、リズの髪を撫でながら、開いたページの続きを読み始める。
リズは嬉しそうに笑いながら、眠りの海へと降りて行った。
友梨はリズの肩まで毛布をかけてやりながら、小さく溜息。
この一週間で、リズは驚くほど痩せた。
首からのリンパ節が腫れ上がり、天使のようだった顔の形が変わってしまっている。
神さま
友梨はロザリオを取り出すと、リズの為に祈り続けた。
愛する小さな者の死など、もう、コリゴリだ。
…………?
何故か、一瞬、胸が、痛んだ。
オカシイ、オカシイ。
愛する小さな者の死など、体験した事なんてない筈なのに。
友梨は自分の違和感に不安になり、リズの部屋の整理整頓をして、今夜は自分の部屋に戻る事にする。
本来完全看護のホスピスで、友梨がそこまでする事はないのだが。