記憶混濁*甘い痛み*2

その夜、遅く。


友梨の父親の空也が来院した。




「良い方法だとは思わねぇな」


疑似家族の、治療法が。


「条野が判断ミスるなんてめずらしいな。アイツとうとうイカレやがったか?」


無駄に広く豪華な貴賓室で、空也と芳情院、そして狩谷が話していた。


革張りのソファーの前には、大理石で出来たテーブル。


上には、冷めたコーヒーが並んでいる。


「反対は、してましたね。条野は。けれど……」


「お医者センセイに言いくるめられたか。友梨が奴の最大の弱点だな。好きな女の為に強くなれずに弱くなる、か……アイツらしーっちゃアイツらしーけど。ダメだろ、それ」


芳情院の言葉に、空也が応える。


「実際、元気になられてますよ、お嬢様」


何故責められるのか解らない。


そんな顔で、狩谷。


「感謝の言葉がないのが納得出来ねぇって顔してんな。元気にするのがオマエらの仕事だろってツッコミはなしにして、一応言っといてやるよ、ありがとな。けどよ、その治療は……いつまで続く?」


行儀悪く、ソファーの座る部分に足を上げ、片膝を立てる空也。


狩谷は、一瞬、鼻白んで。


「いつまで、とは?」


と、聞き返す。


「だから、いつまで家族ごっこしてりゃあイイんだよ?」
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