記憶混濁*甘い痛み*2

そして。


『イマ ユウリ ノ トナリ ニ イルノハ オレ ダ』


なんて。


つまらない、子供じみた満足感も。


友梨を想うあまりに、オレに彼女を預けるしかなかった条野に見せつけるように彼女の肩を抱いて、偽りの愛情にしがみつく。


抜け殻の身体を抱きしめて、それでも彼女のぬくもりに安心して自分を保つ事でしか、プライドを守る方法なんてないクセに。




芳情院は今夜何十度目かの溜息をついてから、指輪を強く右手の親指と中指で押さえこんだ。




……外したくない。

外し、たくない。


「……」


思いながら、また、溜息。


友梨の今夜の台詞が、芳情院に溜息をつかせている。




『…カエラナキャ…』




なんて。

友梨、オマエは、どこに隠れている?

オレを憎み、条野を選んだオマエは……

まだ、いるんだろう。

ミヤマサキユウリではなく、ジョウノユウリとして。


その美しい身体のどこかに、身を潜めて。

今意識の外に出ている友梨の行動をも、静かに見つめているんだろう。
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