記憶混濁*甘い痛み*2
「…ゴメンなさい」
友梨はロザリオを包んだ手を離すと、芳情院の頬を両手で包み
「お兄様…友梨の事で、そんなに心を痛めないで…?友梨は…自分の寿命の事は怖くないの。でも…お兄様の哀しまれるお顔は見たくありません」
と、言って、そっと、優しくキスをした。
「友梨……?」
友梨の可愛い行動に、芳情院は少しだけ戸惑う。
「私……お兄様の為に、生きますから」
「…友梨」
「ね?お兄様…」
「友梨…」
友梨の優しい微笑みは、まるで聖母のようだ。
10も年下の娘に、芳情院は癒される。
友梨を……愛している。
彼女が幼い頃に誓った、ただ守りたいだけの気持ちから、想いは強く深くなり、女性として求める程に焦がれ、狂おしいほど愛してしまった。
……もう二度と
友梨を泣かせたくない
そして友梨を、離したく……ない
友梨を条野に……返せない。
一度手に入れた愛情を無くすのは、どれだけ辛い事だろう
いやだ、離せない。
友梨の手を、二度と。
条野の苦しみを間近で見ても……返したくない。
…………返さない。
オレがやっと見つけた、友梨との、未来------