記憶混濁*甘い痛み*2
友梨は、軽く指輪を回してみる。
上の指輪も簡単に外す事は出来るものの、結婚指輪を外す事には躊躇いがあった。
上の指輪は、TIFFANYのプラチナにホワイトダイア。
下の指輪は、ハリーウィストンのプラチナにピンクダイアが埋められている。
正直、ハリーウィストンの方が自分の趣味には合っているが、芳情院の趣味ではないように思えた。
お兄様のイメージなら、お兄様の指にもはめられているTIFFANYのシンプルな指輪。
物静かで落ち着きがあって、知的で涼やかな美しい人。
ハリーウィストンは…どちらかと言えば条野さんのイメージだ。
華やかなのに品があって、優しく甘やかで綺麗な人。
ほんの少しだけ見えた指輪の地金が、この指輪に似ているような気がした。
ロザリオも、指輪も
けれど。
きっと、単なる偶然ね。
私…条野さんの事を気にしすぎだ。
お兄様がいるのに、おかしいわ。
もう一度指輪をクルリと回してから、友梨は着替えてベッドに横になった。
「全ての方に明るい明日を……大好きなお兄様に、優しい夢を……」
そして。