シブヤクーロン
「お目覚めですか、姫。」
‥帰して‥
「大丈夫か?飯作ったけど食えるか?」
たまごを焼いた油の匂いが、むんっとあたしを襲う。匂い云々というか、知らない家で優雅に食べてる場合じゃないから。
「まだ気分悪そうだな。俺出かけるけど、ゆっくりしてな。」
「あ、の、」
「もしかして覚えてねえ?昨日の帰り道、急に倒れたから医者行くかって言ったらいいって言うから、連れて来たんだけど。」
それホントなの?
ならば、
「‥ご迷惑おかけしました。ありがとうございました。」
頭を下げたまま帰ろうとすると、手首をぐっと掴まれた。
「警察が来てもかばってやれねえ。それで良かったら自分んちだと思ってゆっくりしてろ。」
にっこりして勝手に鍵を渡し、奴はあわただしく出ていった。
やっぱり危ないよ
そう思いつつふらふらの体で横になると、奴は夜になっても帰って来なかった。