シブヤクーロン
 
 呼ばれた店は、家から下った渋谷のど真ん中だった。
親はもう、あたしがこの辺でふらふらしてると思ってるに違いない。
探しに来てるかも知れない。


あたしが浮かない顔してるもんだから、依子ちゃんが気にかけてくれた。



「ゆりちゃんどした?さっきから大人しいよぅ。」



前に病院で身元をばらしてしまった事を話すと、依子ちゃんは笑った。 



「大丈夫よ。こんなに人がいるんだもん。お母さん来たって見つからないよ。見つかったら智子さんち即帰る!」
 
「えっ!やだよ~。美麗さんに迷惑かかるじゃぁん。」
 
「家出中にあんな高級地にいるとは思わないでしょ。ホテル街をさ迷うよ、お母さん(笑)ゆりちゃんはまだ無垢なんだね。」



 すっかり家出生活になれた依子ちゃんはそう言った。ちょっと馬鹿にされた感じもあったけど、これから生き抜いていくには、これくらいの先輩が必要なんかもしれない。


いつかぁたしも、依子ちゃんみたいにすれていくんだろう。



「なんか同い年なのに、ゆりちゃん妹みたい。」
 
「だって‥家出てから2ヶ月経っても、まだ知らないことだらけ。夜遊びも仕事でしかしてない。ほんとは、この街も新宿も怖い。」 

「あたしと遊んでよ!あたしだってはじめはなんもわからなくって、男に色んなの教えてもらったんだよ。ヤバいときの切り抜け方も覚えたから(笑)大丈夫!」


 依子ちゃんが妙にベタベタしてきた。
彼女も孤独だったのかな。

仲良くなれたらいいけど、なれるかな。


仲良くなるには、彼女のようにならなくちゃだめなのかな‥


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