シブヤクーロン
 
 とりあえず台所だけ雑巾がけして、ひとつのお布団を敷いた。


エアコンがあるのはフローリングの部屋。
カーテンがなくて外からまる見えは嫌だから、台所との敷居を閉めきって寝ると‥



「あ~もう暑い!もっかいシャワー浴びてくる!」



そう言うと、またかって依子が笑った。
依子も二回入ったくせにぃ。



「ゆり~、トイレしてい?」

「いいよー。いいけど、ユニットバスってやぁね(笑)」

「やぁねぇ(笑)あ、今おっさんから電話きた。」

「えっ?なんて?」

「うちの電話番号教えるの忘れたって(笑)」 

「ぎゃはあ。ちぅかさぁ、仕事のことなんも聞いてないよねぇ‥どうしたらいいのよ。」 
 
「電話来るって言ってたじゃん。ゆり、まだびびってんのぅ?」

「違っ‥だって店の名前も場所もなんも‥だいたいはっきりキャバクラとも聞いてないし。‥より?依子?」 



 急に静かになった。
依子は用を済ませても、まだそこにいる。



「ごめん。さっきテレビ見たら、今日終戦記念日だったって気づいた。なんか切なくなったわあ。」



あ、今日あたしの誕生日だった。
また夜逃げをさせられ、カーテンのない部屋で、人生最悪の誕生日を迎えた。


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