シブヤクーロン
 
 依子を見てると、今日誕生日だって言えなかった。

自分のおじいちゃんが戦争で亡くなったとかでもないのに、戦争って悲しいねって言う。


あってはならなかった事
忘れちゃいけない事 
当たり前の事だけど、依子もそんなこと思うんだなんて。



「依子えらいね。」

「えらくないよ~。気持ち悪いなあ。」



隣で寝ている依子が、照れて背中を向けた。
女の子の背中って小さくて可愛い。


背中をくすぐる。
依子が笑う。
脇をくすぐる。
依子が笑う。


いつも一緒にいるのに、今が一番楽しくて幸せだと思った。
小さな布団の上の大きな幸せ。
最高の誕生日になった。


依子と一緒なら、何だって出来る。
そう思った。


< 49 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop