シブヤクーロン
別れ道
「ありがとうございましたー」
新しい仕事は、銭湯の店番だった。
いっつも寒くて、孤独で、がやがやうるさくて、とにかくひまで。
たまに出入りするもわっとしたお湯のにおい。ちょっと好きだけど。
団体のようなお年寄りの話し声や、子供の叫び声、うんざりする。
でも久しぶりにまともな暮らしをしている気がする。
クラブ勤めのよりがどうってわけじゃないけど。
「百合子ちゃん、これ食べて。」
常連のおばちゃんは、いつも近くのケーキ屋さんでロールケーキを買ってきてくれる。
まるごと一本で売っているものを、半分は2センチくらいずつに切ってもらってくるんだけど
「毎回入浴料とケーキ代、バカにならないよ?」
「バカにならないよ。どっちも欠かせないものだから、バカになんかならないのっ!」
そう言っておばちゃんはおばちゃんの輪に入っていく。
「恥ずかしいから見ないでくれよな。」
「見られるほどのモン持ってるのかよ。」
「ちゃんと洗ってから入ってくださいねー」
近くで家を建てている大工さんたちは、お風呂セットをうちに預けている。
完成したら来なくなるんだろうな。
やっぱり孤独、ひま。