シブヤクーロン
「あり得なーい。ひたすら座ってる仕事って無理なんですけど。」
「よりも座ってる仕事じゃん。」
「そっか。そだね、あは。でもせんべいからケーキに昇格か。いいな。」
「あんたダイヤもらって来たじゃん。何個め?」
よりの帰りは遅い。
あたしも0時過ぎるけど、よりは新聞屋さんとすれ違うような時間に帰ってくる。
でも夜型のあたしたちは、毎晩、毎朝、しゃべりまくるのが楽しみだ。
疲れて帰ってくることはないとりは言う。
あたしと飲むために酒をセーブして、体調を整えてくるんだって。飲むのが仕事なのに。
時間はともかく、健康的になったかな。
ちょっと前までよりが病んでいたなんて信じられないくらい。
本当はまだどこかで傷ついているのかも知れないと、変に気遣ったとき、そういうの止めてと本気で怒られた。
それからはあたし、遠慮しない。
「今日はどんな手でダイヤもらって来たわけ?」
「何にもしてないよ。店に来るなり差し出してきたんだもん。」
「差し出したって…“姫、お受け取りください”てか?」
「お妃様とお呼び。」
「お妃って、お客さんと結婚するの?お妃様、どうぞって、不倫?きゃは!」
よりといると、何にも変わってないと感じる。
何かが変わったって、よりとの仲は変わらない。
変わったってことも忘れてしまう。