シブヤクーロン

「あり得なーい。ひたすら座ってる仕事って無理なんですけど。」

「よりも座ってる仕事じゃん。」

「そっか。そだね、あは。でもせんべいからケーキに昇格か。いいな。」

「あんたダイヤもらって来たじゃん。何個め?」




よりの帰りは遅い。
あたしも0時過ぎるけど、よりは新聞屋さんとすれ違うような時間に帰ってくる。
でも夜型のあたしたちは、毎晩、毎朝、しゃべりまくるのが楽しみだ。
疲れて帰ってくることはないとりは言う。
あたしと飲むために酒をセーブして、体調を整えてくるんだって。飲むのが仕事なのに。

時間はともかく、健康的になったかな。
ちょっと前までよりが病んでいたなんて信じられないくらい。
本当はまだどこかで傷ついているのかも知れないと、変に気遣ったとき、そういうの止めてと本気で怒られた。

それからはあたし、遠慮しない。




「今日はどんな手でダイヤもらって来たわけ?」

「何にもしてないよ。店に来るなり差し出してきたんだもん。」

「差し出したって…“姫、お受け取りください”てか?」

「お妃様とお呼び。」

「お妃って、お客さんと結婚するの?お妃様、どうぞって、不倫?きゃは!」




よりといると、何にも変わってないと感じる。
何かが変わったって、よりとの仲は変わらない。
変わったってことも忘れてしまう。






< 54 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop