シブヤクーロン
「すいません。」
やっぱり熱が出ちゃって、早退するとおっさんが迎えに来てくれた。
後部座席はシート倒せないから、こんなときもおっさんの隣の席。
休まるはすがない。
早く着かないかな。
寝てろって言われても車だと5分だし、この5分がこんなに長いとは…
なんか話さなくちゃ。体に悪い。
「もう12月だよ、お風呂屋寒い。」
ちょっと、そんなこと言っちゃダメじゃん。せっかくおっさんがくれたあたしに合う普通の仕事なのに。
そうか、とも言わない。おっさんはいつにも増してだんまりしてる。
お尻につけてる鍵を邪魔そうに何度も触って、ジャラジャラとした音が車内に響く。
横目で見るとおっさんはパッと手を離し、また静寂とやらをくれた。
あたしが寝ていると思ってるおっさんは、車を停めるとひとりで降りようとする。
寝れるわけないじゃん、5分で。
「起きたか。お前も行くか?なんか飯でも。」
目を開けると、コンビニの前に停まっていた。
いつものお店じゃないんだけど。どこだろう、ここ。
「いい。よりが作ってくれたおかゆがまだある。」
「食えるのかよ、それ。アルミ鍋のうどん買ってくる。」
それからよりが帰るまで見てやるとおっさんは言ったけど、とんでもない。
寝るだけだからって、追い払った。
休めないし、早く帰ってもらわないと、またよりが酔って帰ってくる。
本当、見せらんないんだから。