シブヤクーロン
家に着くと、玄関の鍵が空いていて明かりが漏れてる。
泥棒?
まだよりが帰る時間じゃない。
急いでおっさんを呼ぼうとしたけど、もう車はなかった。
どうしよ。こわい。なんかがさがさやってるよ。
…違う、よりだ。
なんだかごはんのにおいと焦げ臭いのが混じってる。
なにしてんの
家の中がもやだらけなんだけど。
「ちょっとより!なにしてんの!」
カレー鍋を焦がしたまま火はつけっぱなし、台所にはビールの空き缶が散乱してて、よりは奥の部屋で寝ている。
「なにしてんのよ!起きなさいよ!火事になるよ、ばか!」
「ん…おかえりぃ…」
一言返事をしただけで、またすぐ寝て起きない。
暖房もつけないで、ワンピース1枚ではだけちゃってる。
すんごい酒臭いし…
あたし寝れないんですけど。
部屋はそんなに散らかってないとこ見ると、ごはん作りながら飲んでたわけ?
翌朝起きると出かけてくると書き置きがあって、よりは居なかった。
あんなになってたのに大丈夫なの?
部屋と台所まで綺麗になってるし。
その部屋の片隅に、旅館のパンフレットがぽつんとあった。
箱根かあ
まさかそのために頑張っちゃってる?
お給料はよりのが断然上だし。あたしはどんなに頑張ってもそんな余裕ない。
最低賃金。
誰と行くんだろ。まさかお客さんと?
連れていってもらうのかな。
ゆりと飲むために仕事では飲まない
って、最近そうじやないし。