シブヤクーロン
「ねぇ、おっさん。」
「そのおっさん止めないか。毎日送ってやってるのに。」
「じゃあ…安田のおっさん。」
クリスマスまであと1週間になった夜、休みで寝ていたところを起こされ、おっさんとよりを迎えに行くことになった。
なんか、ごちそうしてくれるんだって。
でも急にうち来るんだもん、また引っ越しかとびびったし。
おっさんとごはん、
限りなく他人と相席状態に近くなるだろう。
「なんで高速?」
「横浜行くからな。」
「は?よりは?より頑張ってるのに、怒るよ?」
「お前が黙ってればいい。」
「は?なにそれ。それに…」
実家は横浜だ。
行きたくない。
「そっか。悪かったな。じゃあ戻るか。」
おっさんはなにがしたいんだろう。
東京の街を行ったり来たりして着いたのは、前に住んでた家、美麗さんちだ。
なにも変わってない、美麗さんの趣味のおうち。
慣れたようにドアを開けて、テーブルにじゃらんと鍵を置いて、煙草に火をつけくわえながらお香を焚く。
そんで一仕事終えたって顔で、ソファーに腰を下ろす。
あれ?
ごちそうしてくれるって言ったのに、何にも買わないでまっすぐ帰ってきたし、あたしに対するおもてなしもなし?
「ペットなんて飼ってねぇけどな。ペットならそれらしく座っとけ。」