シブヤクーロン

ペット呼ばわりされて、不覚にもゾクッとした。
静かなおっさんだけど、別にこわいことない。
あたしとよりの世話してくれるし、送迎してくれるし、むしろやさしい。


だけど今、少しこわい感じ。


ソファーの背もたれに腕を伸ばして、ここに座れって合図して、あたしが近寄ると急に腕を引き寄せた。
真っ暗なテレビに、うっすらと満足そうな顔したおっさんが写る。

こんな対象だったの?あたしは。




「寒いか?」

「ううん、大丈夫…」

「そうか。飯だったな。」




おっさんがキッチンに行って解放された。
ほんの少しの時間だったけど、心臓が大変なことになったし。

お水もらいに行くと、腕捲りしたおっさんの腕が、カラフルになっている。




「別に珍しいもんじゃないだろ?」




そう言ってまたにやにやする。
恐る恐る近づくあたしを見て笑うんだ。
でも嫌じゃない。
こういうの。


ごはんは冷蔵庫にあったものを天ぷらにしてくれた。
それにお味噌汁と酢の物。
風貌に反して、おいしい。




「おいしいけど、クリスマスはフライドチキンとか、フライドポテトじゃない?」

「けどってなんだ。それに今日はクリスマスじゃない。」



なんかしゃべらないとと思っておどけてみたけど、会話が続かない。
ごちそう食べたらどうなるんだろう。
どうしてあたしは呼ばれたの?


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