初めては幼なじみ(涼サイド)~ずっと離さない~
「高井さんの相手の君。ちゃんと聞いてる?」
明らかに俺を敵対視した言い方だった。
率直に女の敵とでも言いたげだ。
まあ、叱られて当然といえば当然で……
大人からすれば、まだまだ子供な俺たちで……
もっと、立場をわきまえろと言いたいのだろう。
子供が子供を産んでどうするのかと。
それから俺と沙都は、その助産師に対して
「はい。はい」
と頷くことしか出来ずにいた。
長い長い一時間だった。
終わった頃には、二人ともゲッソリしていた。
ここに来た時の緊張感など、どっかに飛んで行ってしまっていた。
産婦人科を出てから、膨れっ面になっていた沙都だったけど、そんな沙都がどうしようもなく可愛くて、愛しくて……
沙都は……俺の大事な幼なじみで、そして今は大事な彼女になったんだから。
もう、絶対に離さない。
そう心に誓いながら沙都の手を引いて歩いた。
fin