センセイ、好きです。
うっ、わぁあっ。
あろうことか足を滑らせた。
当然の如く、階段から落ちる訳もなく
…落ちる訳もなく?
何で落ちてないんだ?私。
状況が上手く掴めず、キョトンとしてる私に後ろから声をかけられた。
いや、バカにしたような言い方で言われた。
「イマドキいるか、階段から落ちそうになるやつ。おこちゃまなんだから、ちゃんと下を見ろよ」
なっ…!
何この人!
顔は格好良いけど中身最悪!
「おこちゃまじゃないですっ!しかも落ちてません!何なんですか、アナタは!」
「うわー、折角助けてやったのに。何その口の聞き方。木本聖花ちゃん」
「な、んでアナタが私の名前知ってるの!?」
「さぁね♪でも、ま。直ぐわかると思いますよ?」
勝ち誇ったかのように言う男の人。
スーツを着てるけど新人のサラリーマンか何かか?
「じゃ、俺用があるからこの辺で。じゃあね、聖花ちゃん♪」
ニーッコリ笑って去ろうとするソイツ。
「待って、名前なに」
私だけが名前知られてるなんてフェアじゃないもん。
男は一瞬びっくりしたような顔をしたかと思えば、元の顔に戻ってこう言った。
「セイ」
「…セイ?」
私がそう言った時、もう男——セイはいなかった。
これが私とセンセイの出会いだった。