センセイ、好きです。



うっ、わぁあっ。

あろうことか足を滑らせた。


当然の如く、階段から落ちる訳もなく
…落ちる訳もなく?


何で落ちてないんだ?私。


状況が上手く掴めず、キョトンとしてる私に後ろから声をかけられた。
いや、バカにしたような言い方で言われた。


「イマドキいるか、階段から落ちそうになるやつ。おこちゃまなんだから、ちゃんと下を見ろよ」


なっ…!

何この人!

顔は格好良いけど中身最悪!



「おこちゃまじゃないですっ!しかも落ちてません!何なんですか、アナタは!」

「うわー、折角助けてやったのに。何その口の聞き方。木本聖花ちゃん」

「な、んでアナタが私の名前知ってるの!?」

「さぁね♪でも、ま。直ぐわかると思いますよ?」

勝ち誇ったかのように言う男の人。
スーツを着てるけど新人のサラリーマンか何かか?


「じゃ、俺用があるからこの辺で。じゃあね、聖花ちゃん♪」

ニーッコリ笑って去ろうとするソイツ。


「待って、名前なに」

私だけが名前知られてるなんてフェアじゃないもん。


男は一瞬びっくりしたような顔をしたかと思えば、元の顔に戻ってこう言った。


「セイ」


「…セイ?」


私がそう言った時、もう男——セイはいなかった。




これが私とセンセイの出会いだった。





< 3 / 10 >

この作品をシェア

pagetop