妄毒シチュー
喉を通り過ぎる炭酸の刺激と、舌の上に残る苦味。
暑い夏に冷たいビール。その一口目の幸せをひとりで楽しんでいると
「ミナちゃん。
人がまじめに掃除してるのにひとりでそんな楽しそうにビール飲むとか、ひどくない?」
背後で恨めしそうな声がした。
振り向くと、溜まった古い雑誌をビニール紐で縛りながらこっちを睨む自称天使。
昨日の夜、彼氏にフラれた苛立ちを思いっきり物にぶつけた結果、物が散乱し荒れ果てた状態のあたしの部屋。
彼は散乱した本やCDを綺麗に拾い集めては棚に並べ、倒れた雑貨を優しく元に戻す。
意外にも真面目に掃除する自称天使に驚きながら、あたしはビールを喉に流し込んだ。