妄毒シチュー

「このシチューって、誰かの為に作ったの?」


赤い大きな鍋いっぱいのクリームシチュー。
一人暮らしの女の子にしては、量が多すぎると思ったんだろう。

本当に食べてもいいの?
と、いう風にアタシの顔を伺う。

「いいよ。今日の夕方、元カレがこの部屋の荷物取りに来るって言ってたから作ったんだ」

ペコロスに芽キャベツ、ブロッコリー、ニンジン、ジャガイモ。
大きめに切った野菜がたっぷり入った素朴なクリームシチューは元カレ、コータの大好物だった。

『ミナのシチューが世界一うまい』

そう言いながら鍋いっぱいに作ったシチューを嬉しそうに食べる、白クマみたいなコータの顔を思い出す。

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