妄毒シチュー
ぼんやりとそんな事を考えていると、
「……ねぇ」
唇が触れる直前で、自称天使が目を開けて上目づかいであたしを見ていた。
「ミナちゃん。人がキスしようとしてんのにそんなにぼんやりして、なに考えてんの?」
からかうような口調に、少しだけ混じる彼の苛立ち。
心の中を見透かされてバツ悪い気持ちで、あたしは彼の視線から逃げるように目をそらした。
その視界に、彼の茶色い髪の毛からのぞく白い耳が見えた。
「……正反対じゃなかった」