妄毒シチュー
「えー!?あたしワイン悪酔いするからイヤなのに」
「俺の好きなお酒でいいって言ったでしょ。
文句があるなら自分で買ってきな、酔っ払い」
ニセ天使は駄々をこねるあたしを無視して、食器棚を開けグラスを探す。
「ワイングラスなんて、無いよね」
鼻唄を歌いながらテキトーなコップを二つ持ってきた。
ニセ天使の手元を見れば、よりによって黒いコーヒーカップ。
ビニール袋から取り出した赤ワインをふたつの黒いコーヒーカップに注ぎ、ひとつをあたしに渡してくれた。
「なんだ、この店は。こんなコーヒーカップでワインを飲ませるなんて、なんて悪趣味なんだ」
窓枠で膝を抱えながら、わざと酔っ払いのオッサンのような口調で言うと
「じゃあ、この部屋の住人に、ワイングラスくらい買っておけってクレームつけときます」
と、ニセ天使が笑いながら窓辺に座るあたしの隣に腰かけた。