妄毒シチュー
やっぱりワインはアルコールの回りが早い。
あたしの隣で平然とワインを飲み続けるニセ天使の姿が、微かに揺らぐ。
「この子は家に帰って、これから元カレの事を思ってひとりでビール飲んで泣くんだなぁと思ったら……」
風が運んできたおとなりの庭の梔子の甘いにおいと、赤ワインの香りが鼻の奥で混じりあい
とろりとあたしの感覚を溶かしていく。
「側にいて、涙を拭いてあげたくなった」
さっきからやけに赤ワインがしょっぱいなと思っていたら、頬を伝う涙が黒いカップの中に落ちて
ぽたり、ぽたり
深紅の液体の水面を揺らしていた。