妄毒シチュー
「それとも、彼が幸せになるのが許せないくらい。
彼の未来を奪ってしまいたいくらい、コータの事が好きだったんだ?」
ニセ天使はあたしの頬を優しく拭い、涙で濡れた指をゆっくりと舐めた。
お庭の梔子の甘いにおい
赤ワインの香り
キッチンのシチューの優しい味
塩辛い涙
白クマの檻の前で笑う写真の中の幼いコータ
優しく微笑むニセ天使の綺麗な唇
彼によく似た白い耳たぶ
酔っ払ったあたしの頭の中で色んなものが
ぐるぐると
もの凄い勢いでぐるぐると回り
溶けたガラスみたいに混ざり合う。