妄毒シチュー

「はぁ……」

その綺麗な人懐っこい笑顔に圧倒されて、思わず頷いてしまった。

「じゃあ、行こうか。家はどっち?」

なんて言いながら、どんどん歩いていく美少年の後ろを慌てて追いかける。

長めの茶色の髪に緩めのパーマ。
センスのいいTシャツ、細身の黒いデニム、長い指にはまったオニキスのシンプルな指輪。
そんなお洒落な格好が厭味なく似合ってしまう中性的で綺麗な顔立ち。

あたしがビールを抱えて歩いても、ただだらしなく情けない女にしか見えないのに
彼がそうするとなんでこんなに軽やかに見えるんだろう。

それにしても。

初対面にしてはやけに親しげな彼の態度に少し、違和感。



あれ、もしかしてこの人
どこかで会った事あったっけ……?

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