妄毒シチュー
何、言ってるの?
昨日偶然行った美容室で会っただけ。
ただそれだけのあんたにコータがどう思っていたかなんて、わかるわけない……。
「幸せな時間が終わったからってそれが嘘になる訳じゃない。
ただ、過去の事になるだけだよ」
そんなのただの口から出任せの慰めだってわかってる。
でも、
彼の言葉はぼんやりとしたあたしの頭に、静かに響いて広がっていった。
「だから、ミナちゃん。悲しまなくていいんだよ」
その声があまりに優しくて、心の中のなにかが弾けた。
気が付くとあたしは声を上げて、子どもみたいに泣いていた。