妄毒シチュー
あたしはソファーに寝転がり、窓辺に座るニセ天使の影がゆっくりと伸びていくのをぼんやり眺めていた。
「ねぇ、ミナちゃん。
恋ってさぁ、毒入りのスープみたいなもんだと思わない?」
「……どういう意味?」
陽が傾き、窓から吹き込む風も少し涼しくなってきた。
「理屈じゃないじゃん。恋に落ちる時って」
レースのカーテンが揺れて、窓辺に座る彼の頬を柔らかく包む。
その風に彼の茶色い髪も微かに揺れた。
ふたりきりのこの部屋の中に静かに響く彼の声と
遠くから聞こえるヒグラシの鳴き声。
なんだか熱に浮かされたみたいに、頭がぼんやりする。