妄毒シチュー
「大切な彼女がいようが、昨日彼氏にフラれたばかりだろうが。
こっちの都合なんかお構い無しに突然差し出される毒入りのスープ」
なんでだろう。
身体が熱い。
白いレースのカーテンに見え隠れするニセ天使の姿を見ながら目を擦った。
「何も知らずに食べはじめてさ、毒が入ってると気付いた時にはもう手遅れ」
シャッ、と音を立てて彼がレースのカーテンを引く。
そして、ゆっくりとカーテンをくぐり抜け、あたしの座るソファーへと歩いてきた。
「自覚症状が出る頃にはもう末期。
身体中に毒が回って、どんどん理性が崩されて冷静ではいられなくなる。
ゆっくりと心臓にたどり着いた毒が心まで支配する」
「……ずいぶん、物騒な例えだね」
「だってそうでしょう?
恋愛感情に理屈なんて通用しないし、良心も理性もぶっ飛ばす」