地平線の彼方まで~遠さは決まってる~
始まりの予感
「帰りの挨拶をします、さようなら!」
「「さようなら」」

 教室中、椅子の音がガタガタと響き渡る。
 私は、誰にも声を掛けずに一一目散に教室を飛び出した。

「楓子~、またパソコン?」
 隣に親友・沙羅が目線を合わせて聞いてきた。

「…そうだけど、何で?」
「いや……いつもの事かと思ってさ♪」
 沙羅は明るく、私の事はほとんど何でも知っている。
 秘密も沙羅には話せる……。
 え?秘密?それは……オタクってこと!

 階段を駆け下り、靴を履き替えて家の方向へと向かった。
 沙羅も一緒に。

 ここは、ある小学校。
 私はそこの6年。

 恋……かぁ……。


「もう卒業かぁ……」
 私の呟きに、沙羅も耳を傾け、返事をした。

「そっか……。あと15日だよね」
 え!?もうそれしか無いの??

「あ!」
 今思い出した。
「ん?」
「チャット!」
 チャットには、友達もいるし、彼氏だってできる。
 ……もっとも、現実とはかけ離れているけど。

「じゃあね~」
「また明日ー」
 途中の分かれ道で、沙羅と分かれた。

「ただいまー」
 と言っても、家には誰も居ない。
 でも、パソコンの中で友達が待ってるし、いいや!

 アルバムがテーブルの上に置いてある。
 パラパラとめくると、一つの写真が目についた。

 小4のころ……?かな?
 同じクラスの直期と仲が良さそうに2人で写ってる。
 公園らしき場所で。

 そういえば、最近話してないな~。

 「あ、パソコン!」

 約束の時間まであと4分。
 急いで電源を付け、ネットの世界へと私は旅立っていった。



 しかし、直期との写真は頭から離れなかった……。





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