天使のような笑顔で
「今ここで話す事じゃない。また後できちんと話すから、お前はコートに戻れ」


だけど、先生は教えてくれない。

今ここで話せない事って、一体どんな事なんだよっ?


「こんな気持ちのまま、コートなんて戻れません。教えて下さい、先生っ」


こんなあやふやな気持ちのまま、どうやって試合に集中すればいいんだよ。


「真人、教えてやれよ。何の話なんだよっ」


和也も、いつになく真摯な表情で助け船を出してくれる。

そんな俺達の熱意に負けたのか、先生は軽く溜息を一つ吐くと。


「……悪かったな、口を滑らせて」


そう、謝ってきた。


「てっきり、彼女から聞いてるもんだと思ってたから」


その表情は、申し訳なさに溢れていて。

先生が深刻な顔をする度に、俺の不安が高まっていく。


「何を…俺は安以から聞くんですか?」


情けないぐらいに、震える声。

これから始まる試合よりも、緊張している自分がいる。


安以が、どうして今日来れないのか。

俺が聞くであろう話っていうのは、何なのか。


「実はな、高崎……」


願わくは、俺達2人にとっていい話でありますように……。
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