天使のような笑顔で

embarrassment

「高崎っ」


体育館から駅に向かう途中で、後ろから声を掛けられた。

見るとそこには、今日の対戦相手のチームのキャプテンである矢島がいた。


矢島は、前に俺が安以に言っていた他の中学のキャプテンで。

一緒の高校に行こうって、誘ってくれてる奴だ。


「お前、今日変だったぞっ」


「そう…かな?」


心当たりがありすぎて、やましさからズキンと胸が痛む。

矢島の真っ直ぐな意志の強い視線が、今の俺には辛く感じる。


「凡ミスばっかでさぁ、心ここにあらずって感じで。試合に勝ったのは嬉しいけど、お前があんなんじゃ…何かすっきりしないんだよっ」


「矢島……」


「何があったのかは知らねぇけど、中学最後の試合がアレかよ」


さっきの試合が、俺の中学最後の試合となった。


島崎先生の話を聞いた後の俺は、ずっと抜け殻のような状態で。

実際、試合中にどんなプレーをしたのかもよく覚えていない。


ただ、気がついたら試合終了のホイッスルが鳴らされて。

30点以上も差をつけられて、俺達のチームは負けてしまっていたんだ。
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