天使のような笑顔で
「やっぱり、ドイツに行くの?」


安以から打ち明けられるはずの言葉を。

俺は、自分から問いかけてしまった。


胸が苦しすぎて。

これ以上、淡い期待を抱いてはいられなかったんだ。


島崎先生の話がデマなんじゃないか、っていう微かな期待を。


『……』


だけど、安以からは何も言葉が返ってこなかった。

肯定の言葉も、否定の言葉も。


ただただ、沈黙ばかりが流れてくるだけで。


でもこれって、裏を返せば…肯定なんだよな。

否定できないって事は、やっぱりドイツに行くって事なんじゃないのか?


「島崎先生が、そう言ってたからさ。それって、ホント…なの?」


『ごめ…なさ……』


消えてしまいそうな声で安以が告げたのは、謝罪の言葉だった。


それって、認めたって事なのか……?


「冗談…だよね?先生と組んで、俺の事騙そうとしてるんだよね?」


そんなわけない、って分かってるんだけど。

どうしても、俺はこの現実を受け入れる事ができなかったんだ。
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