天使のような笑顔で
「安以?」


俺に全く気付いていない様子の彼女に、驚かせないように小さめの声で呼びかける。

気付いて振り返った彼女は、俺だと分かると大きな目を更に大きくさせた。


「真吾……」


「中に用事?」


目で体育館の中を示すと、彼女は慌てて首を横に振った。


「真吾に…会いに来たんです。島崎先生に、体育館にいるって聞いたから」


そう言って、安以はゆっくりと俺に近付いてきた。


何日かぶりに会う安以の姿にドキドキしつつ、俺は彼女の次の言葉を待っていた。

わざわざ会いに来てまで、俺に言いたかったであろう言葉を。


「会って、ちゃんと話がしたかったんです。時間…ありますか?」


ドクンと心臓が跳ねるのを感じた。

いよいよだって思うと、急に息が苦しくなってきて。


「……いいよ」


そう答える俺の声は、何だか掠れているような気がした。

話をちゃんと聞くってさっき決意したばかりなのに、激しく脈打つ鼓動に思わず心が折られそうになる。


「ありがとうございます」


切なそうに微笑む安以は、ゆっくりと歩き出し。

俺も…それに続いた。
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