天使のような笑顔で
「ごめんな」


照れくさくて、俺は安以の方を向けずにいて。

頭上に広がる緑を見上げながら、そうぼそっと言葉を発した。


「え……?」


右下からの安以の視線を感じつつ、俺は顔を上げたまま言葉を続ける。


「ちゃんと話聞かずに、逃げてばっかでごめん」


弱い男で、ホントごめん。


そう、心の中で言葉を続ける。


「私こそ…すぐに言えなくてごめんなさい」


安以の声はひどくか細くて、彼女の抱える辛さが俺の胸にズキンと突き刺さってきた。


そうなんだよ。

辛い思いをしてるのは、きっと俺だけじゃないんだ。


「いつ…出発?」


やっと、俺は安以を真っ直ぐに見る勇気を持てて。

不安そうに俺を見上げている彼女に、少しばかりの笑顔を向けてやれた。


「土曜日…です」


土曜日までは、あと3日しかない。

残された時間の短さに驚いたものの、手遅れにならなくて良かったと心底思った。


「そっか、土曜日か……」


もっと気の利いた言葉を返してやりたかったのに、そんな事しか言えなくて。

自分の不甲斐なさがつくづく嫌になる。
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