天使のような笑顔で

encounter

「ミャア」


慌ただしい朝。


朝練に向かう俺は、急いで身支度を整えていて。

何か言いたげに俺に向かって鳴くアイの前を、そのまま素通りしようとしていた。


「ミャーア」


拾った時より幾分大きくなっている体と共に、鳴き声も大きくなっていて。

俺の足を止めさせるには十分だった。


「お腹減ってるんだよな?ちょっと待ってて、すぐ用意するからっ」


アイに通じているのかは分からないけど。

俺はそう声を掛けると、慌てて部屋の隅に置いてあるキャットフードの大袋を手にした。


ベッドのそばでじっと待っていたアイは、袋を目にすると嬉しそうに近寄って来て。

そんなアイの表情に和まされつつ、俺はベッドの下から器を取り出してそこの上に餌を乗せた。


「いっぱい食べろよ」


カリカリと美味しそうに食べているアイに声を掛け、俺は袋を元の場所に戻した。


壁に掛かっている時計に目をやれば、もう家を出る時間になってしまっていて。

慌てて俺は、ハンガーに掛けてあったブレザーに手を通した。


「じゃあ、行ってくるな」


夢中で餌を食べているアイからは何の反応も無いけれど。

俺は、そのまま部屋を後にした。
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