天使のような笑顔で
「あれっ?真吾じゃんっ」


教室の前の扉で佇んでいた俺の姿を見つけた諒斗が、驚いた表情でこっちへと足を運んで来た。

諒斗と話をしていたその彼女と友達も、何事かとこっちへと視線を向けている。


笑っていない顔は、安以とはやっぱり違うけれど。

それでも、十分“可愛い”と言われるレベルの子だった。


「どうかしたのか?」


「あっ、これを届けに……」


彼女を見ていた俺は、諒斗の問い掛けに慌ててポケットへと手を伸ばした。

生徒手帳を取り出し、そのまま差し出す。


「えっ、俺の?」


咄嗟にブレザーやズボンのポケットを探りだすものの。

もちろん、諒斗からは手帳は出てこない。


「全然気がつかなかったよっ、サンキューな」


そう言って笑いながら、諒斗は手帳を受け取った。


「あのさ……」


「ん?どした?」


彼女の事を訊こうと思ったものの、急に恥ずかしくなって躊躇してしまい。

俺は、その後の言葉を続けられなかった。


「……ごめん、何でもない」


「何だよそれっ、気になるだろっ」


「悪い、また話すから」


そう謝ると、俺は逃げるように諒斗のクラスを後にした。
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