天使のような笑顔で
彼女と別れてから、たぶん5分も経っていないと思う。


それなのに、さっきの場所には彼女の姿が無かった。


「どこ行ったんだ……?」


辺りを見回しても、彼女らしき人影はない。

体育館に入ったのかと思って中を覗いたが、ここにもいなかった。


「遅かったな、真吾」


俺の姿を見つけた部員の一人が、そう言って近づいて来た。


「彼女…見なかった?」


「彼女?誰の事?」


「うちのクラスの、転校生の桜庭さん。さっきまでそこにいたはずなんだけど」


そう言って、俺は入口を指差した。

だけど、そいつは首を傾げ。


「悪りぃ、気付かなかったわ」


と、すまなさそうに謝ってきた。


練習してたら、見学してる女の子たちなんていちいち見てられないよな。


「ごめん、練習続けてて」


そいつにそう言うと、俺は走って体育館を飛び出した。
< 17 / 123 >

この作品をシェア

pagetop