天使のような笑顔で

anxiety

「……ここは動物病院じゃないぞ、高崎」


そう。

ここは確かに、保健室だ。


あれから仔猫を連れてやってきた俺達は。

ちょうどいた保健医の島崎先生に、猫を診てもらうように頼みこんだんだ。


その時の先生の第一声が、今の言葉。


20代後半ぐらいの年齢の、島崎先生は。

白衣が何だかエロく感じられる…男性保健医だ。


「それは承知してます。でも、先生しか頼れなくて」


仔猫をベッドに置き、俺は顔の前で手を合わせた。


「おっ、お願いしますっっ」


桜庭さんも、深々と頭を下げている。

その彼女を見て、島崎先生は首を傾げていた。


「見ない顔だな、君」


興味深そうに、彼女の全身を舐めるように見回す。


「今日転校して来た、桜庭安以です」


彼女の答えに、


「なるほどね。だから、こんな可愛い子を俺が知らなかったんだな」


納得したように、そう呟いている。


全校生徒の顔を把握してるらしいっていう噂は、ホントだったんだな……。


妙に、説得力があった。


「まぁ、彼女に免じて診察ぐらいはしてやるけど」


そう言って、先生はそっと仔猫に手を伸ばした。

怯えて警戒しているアイツに、ふっと優しい笑顔を向ける。
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