天使のような笑顔で
「それで、コイツはどっちが飼うんだ?」


先生の声に、俺達はまた顔を見合わせた。

ケガを治す事に必死で、その後の事は全然考えていなかったんだ。


「飼い主がいないのなら飼ってあげたいんですけど、うちはマンションなんで……」


悲しそうに、桜庭さんはアイを見下ろしていた。

そんな事とは知らずに、アイはおいしそうにミルクを舐め続けている。


「俺、親に訊いてみるよ。うちは一軒家だからさ」


桜庭さんが無理なのなら、俺が飼ってやりたかった。

アイの為にも、彼女の為にも。


「アイは俺がとりあえず見とくから、お前は部活に戻れ。桜庭さんも、ソイツの応援してやって?」


アイの頭を撫でながら、先生がそう言った。

確かに、時間を見ると5時を過ぎている。


そろそろ戻んないとな……。


キャプテンとして、このままサボってしまうわけにはいかないし。


「じゃあ、お願いします」


俺は、先生に頭を下げた。

そんな俺を見て、桜庭さんも慌てて頭を下げている。


「忘れずに、迎えに来いよ」


そして俺達は先生にアイを預けて、体育館に向かう事にした。
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