天使のような笑顔で
「高崎君、本当にありがとうございました」


保健室を出ると、歩きながら彼女はそうお礼を言ってきた。


「いや、俺は何もしてないし」


実際、そうだった。


アイを見つけたのは桜庭さんで、捕まえに行った彼女から受け取っただけ。

傷の手当てをしたのは島崎先生だし。


俺は…自分もケガした、ただの付き添いだよ。


「何言ってるんですかっ。高崎君がいなかったら、私とアイはまだ木の上にいるかもしれないんですよ!」


そうムキになる彼女に、苦笑いを返す。


「いくらなんでも、誰かが助けてるよ。それに……」


そこまで言って、俺は情けない自分を思い出していた。


男らしく、カッコ良く受け止めてたらな……。


ふと、その受け止めたのが島崎先生だったら?なんて考えてしまった。

白衣を纏った、俺より少し高いぐらいの長身のイケメン保健医。


絵になるよな、実際。


「聞いてますか?高崎君」


「えっ?あ、ごめん……」


「もぉっ、聞いてなかったんですか?」


そう言って、彼女は口を尖らせる。

その表情がおかしくて、俺は懸命に笑いをかみ殺していた。
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