天使のような笑顔で
「島崎先生だよ」


俺は、正直に答えた。


「はぁ!?真人っ?あの変態保健医のどこがいいんだ?」


俺から体を離すと、真面目な顔で和也はそう言った。

このイトコ達は、仲があまり良くないらしい。


「さぁな。アイを手当てしてくれたのが嬉しかったんじゃないのか?」


「アイ?あぁ、例の猫か。もしかして、お前って昨日俺が見た時にケガしたのか?彼女が騎乗……」


周りに聞かれないように、慌ててこのエロ生徒会長の口を手で塞いだ。


「変な事言うなっ。あれは、木の上にいた猫を彼女が助けに行って下りられなくなったから。だから俺が受け止めようとして、失敗しただけだっ」


変な誤解をされないように、俺は和也にそう説明した。

口を塞がれたまま一通り聞いていたアイツは、ゆっくりと俺の手を外すと、


「じゃあ、名誉の負傷なわけじゃん。何で隠すんだよ?」


と言って、不思議そうな顔をした。


「だって、彼女を受け止めてケガしたんだぜ?そんな事知ったら、彼女が責任感じるだろ?」


「俺だったら、そのケガをネタに交際を申し込むけどな」


「そんな事できるわけないだろっ。彼女は好きな人がいるんだし」


「真人の事だろ?そんなの、思春期によくある『年上に憧れる』ってやつじゃねぇの?俺から見たら、お前らいい雰囲気だと思うぜ」


そう言って、和也は俺の背中をポンッと叩いた。


「今はダメでも、そのうち彼女も気付くと思うぞ?」


そう耳元で囁くと、アイツは自分の席へと戻って行った。
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