天使のような笑顔で
「よぉ、高崎」


放課後。

部活の休みをもらって病院へ行こうとしていた俺を、誰かが呼び止めた。


振り返ると……。

昇降口のそばの花壇で、島崎先生が白衣のままじょうろで水やりをしていた。


「先生は、そんな事までやるんですか?」


そのまま、俺は花壇へと近付いた。


先生が水をやっているのは、背丈の随分高くなったひまわり。

黄色い夏の象徴は、見ているこっちを何だか元気にさせてくれる。


「まぁ、暇だからな。それに、嫌いじゃないし」


そう言って、先生は優しく笑った。


明るい茶髪が、『先生』という職業にあまり似つかわしくないように思われる。

白衣を着ていなければ、誰もこの人が保健医だなんて思わないだろう。


「それより、手はどうだ?」


花に目を向けたまま、そう尋ねてきた。


「痛みは、昨日よりはいいです。とりあえず部活休んで、今から病院行ってきます」


「そうか。大会近いから、ひどくないといいな」


そう言うと、先生はじょうろを土の上に下ろした。


「バスケ部は、今度の大会が終わったら3年は引退なんだろ?」


「負けた時点で、引退です」


「1試合でも多く、出れるといいな」


そう言って、先生は一つ伸びをした。

俺より背の高い先生は、背だけでなくて腕も長い。


先生も、昔バスケをやっていたらしい。

だから、バスケ部の俺達によく声を掛けてくれる。


おまけに俺は和也と仲がいいんで、特に可愛がってくれている…気がする。
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