天使のような笑顔で
「えっ……」


言われて、俺は固まってしまった。


『初めて』って事は、初めてっていう意味なんだよな?

でも、俺だって『初めて』なわけだし……。


こんな事なら、和也にいろいろ聞いとくんだったよ。


「高崎君は…嫌ですか?」


縋るような、彼女の眼差し。


嫌なわけが…ない。

むしろ、そうなりたいと俺だって願っているわけだし。


「ホントに、俺でいいの?」


初めての相手が、俺で。


そう、不安になってしまう。

だって、女の子にとっての初めての相手って特別なんだろ?


「高崎君が、いいんです」


そう言った彼女の笑顔は、いつもの天使になっていた。


俺がこのまま彼女を抱いたら……、この天使の羽をもぎ取る事ができるのだろうか?


俺だけの…天使になってくれるんだろうか?


「その代わり、優しくして下さいね?」


そう上目使いに言われ、俺の理性はいよいよ吹っ飛びそうだった。


「桜庭さん……」


「安以で、いいですよ」


「安以……」


そう言って、彼女を抱きしめようとした時だった。
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