天使のような笑顔で
しまったっ!


慌てて、俺は彼女の元へと駆けつけた。

床に手をついて起き上る彼女に、とりあえず謝る。


「ご、ごめんっ。大丈夫?ケガない?」


「……高崎先輩?」


俺の声に顔を上げた彼女は、こっちを見て驚いている。


「俺の事知ってるの?」


こっちは、見覚えが無かった。

元々、顔と名前を覚えるのは得意じゃないし。


「はいっ。私、高崎先輩のファンクラブに入ってますからっ!」


……ファンクラブ。

あるとは聞いてたけど、ホントだったんだ。


何だか、力が抜けてしまった。


「あの…ごめんね、俺がバケツ蹴ったから」


彼女のそばに転がっている水色のバケツを指差し、俺は頭を下げた。


「いえっ、全然大丈夫ですからっ。っていうか、かえってラッキー!みたいな」


そう言って、ショートカットの彼女はニカッと笑った。

バッチを見ると、1年生らしい。


「立てる?どこか痛いとことか、無い?」


彼女の手をつかみ、ゆっくりと立たせようとした時だった。


「痛いっ!」


どうやら左足を痛めたらしく、立ち上がりかけた彼女の体がまた床へと逆戻りした。
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