天使のような笑顔で
バケツを元に戻してから保健室の扉の前に立ち、俺は軽く深呼吸を一つした。


どうか…変な声が聞こえませんように。


そう祈りながら、ドアに手を掛けようとした時だった。


ガラッ


いきなり扉が開いたかと思うと、そこに姿を現したのは桜庭さんだった。


もちろん、制服は着ていて。

見たところ、服も髪もそんなに乱れた形跡はない。


って、何をチェックしてるんだ?俺は。


「どうしたんですか?真吾君」


彼女は、俺と背中に乗っている1年の子の顔を不思議そうに見ている。


俺は…昨日から、『真吾君』と呼んでもらえるようになった。


まぁ、親友なわけだし。

俺にも、『安以』って呼んでいいって言うけど、なかなか照れくさくて簡単には呼べないけど。


「ちょっと、彼女をケガさせちゃってさ」


とりあえず、さっきのが現在進行形でない事にホッとした。


「先生、診てあげて下さい」


彼女…安以は、そう言ってまた奥へと戻って行った。

彼女を視線で追うと、カーテンの中から島崎先生が現れた。
< 56 / 123 >

この作品をシェア

pagetop