天使のような笑顔で
彼女に肩を貸し、もう片方の手に鞄を2人分持って廊下を歩いて行く。

1人で歩くには、やっぱり彼女は辛そうだった。


「ホント、迷惑掛けてすみません」


さっきから、何度も謝ってくる。


「だから、謝るのは俺の方だってば。俺がバケツ蹴ったから……」


「どうして、バケツ蹴ったんですか?」


そう訊かれ、言葉に詰まってしまった。

安以と島崎先生の変な場面に出くわしたから…なんて言えるわけがない。


「先輩、桜庭さんとケンカしてるんですか?」


「えっ?な、何で?」


タイムリーに出てきた彼女の名前に、俺は動揺を隠せなかった。


「昼休み、何か2人の様子変でしたし。私達、ファンクラブには入ってるんですけど、先輩の恋の邪魔はしないって規約があるんですよ。だから、もし私のせいだったらどうしようと思って……」


そんな規約があるっていうのに驚いたけど、それより安以の事を知ってる方がびっくりだ。


「恋って…安以の事も、みんな知ってるの?」


「はい。だって、先輩の彼女さんですから」
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