天使のような笑顔で
昼食を終えた俺は、とりあえず先に教室に戻る事にした。


本当は、保健室の前を通るのが近道なんだけど。

あんな思いをするのは、もうたくさんだ。


遠回りだけど、新校舎の方から帰ろうとした時だった。


「いい気になって彼女ヅラしてっ。ホントはただの友達らしいじゃんっ」


「高崎君が、あんたみたいなブス相手にするわけないでしょっ」


「ホント、図々しい女っ」


視聴覚室の横を通り過ぎようとした時だった。

ほんの少し隙間のあるドアの中から、何人かの女子の声が聞こえてきて。


高崎君って、俺じゃないよな……?


気になって、歩みを戻した。

ベージュ色のドアに付いているガラスの窓から、何気なく中を覗いてみると……。


「安以!?」


数人の女子に囲まれ、足元で倒れこんでいる彼女の姿を見つけた。


「おいっ、何やってんだよ!?」


慌ててドアを開け、中に飛び込んだ。

囲んでいた女子達が、一斉にこっちを振り返る。


見知った顔もあるから、みんな3年なのは間違いないはず。


「や、ヤバイよっっ」


俺の姿に驚いた4人の女子は、慌てて安以から離れてみんなでかたまった。


そして、残された安以の姿を見て。

顔が青ざめていくのが…自分でも分かった。
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