天使のような笑顔で
「じゃあ、どうしてこの子を避けたりするんだ?」


口元に続き、彼女の頬についた擦り傷にも綿を当てていく。

だけどやっぱり、反応はなくて。


目を開けて欲しい。

笑って欲しい。

声を聞かせて欲しい。


そう心から願ってしまう俺は、どうやって彼女の事を諦めればいいんだよ……?


「だって……」


今にも涙が出そうになるのを、手の平を握りしめる事でぐっと堪える。

もう、気持ちを隠しておくのは限界だった。


「安以には…先生がいるから」


「先生……?って、俺っ!?」


俺の睨むような視線を感じたのか。

驚いた先生は、血の付いてしまっている綿をぽろっとベッドの上に落としてしまった。


「俺、見たんですよ。この間、安以と…シてたのを」


「してたって何を?」


「それは、先生の方がよく知ってるんじゃないですか?」


俺への遠慮から、しらばっくれているのか?

それとも、俺の口からあんな事を言わせようとしてるのだろうか?


「いつの話だよ?」


「俺が…斉藤さんをここへ連れて来る、直前の話ですよ」


そう答えると。

先生はその時の情景を思い出そうと、少し顔を上へと向けた。
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