天使のような笑顔で
だって、この名前を出してしまったなら。

嫌でも、アノ話をしなくちゃいけなくなってくる。


「そりゃ、島崎先生は好きですよ。でも、恋愛とかの好きじゃないですからっ」


そう訴える安以の事を、素直に信じてやれればいいのに。

どうしても、あの日の事が頭から離れてくれない。


「じゃあ、何で先生とあんな事を……?」


先生は、肩を揉んでいただけだなんて言ってたけれど。

それは、先生が俺の気持ちを知ってるから。


俺が安以を好きだと、知っているから。

だから、そう嘘をついたんだよ。


でなきゃ、あんな声なんて……。


「あんな事って、何ですか?」


「……俺が斉藤さんをここに連れて来た日、安以と先生がここでシてた事だよ」


不本意ながら、俺はそう答え。

そして、恐る恐る安以の反応を窺った。


きっと、俺に見られていた事に驚くだろう。

そして、それからは…どんな表情を浮かべるんだろうか?


見たいような、それでいて見るのが怖いような。


どうにも、俺の心臓は落ち着かない。
< 84 / 123 >

この作品をシェア

pagetop