天使のような笑顔で
「その日が、どうかしたんですか?」


考え込み始めた俺に、不思議顔で安以が尋ねてくる。


その眼差しは、いたって純真無垢そのものであって。

決して、先生とあんな事をシたようには思えないんだ。


「斉藤さんを連れて来る前に…実は、ここを一度覗いたんだ」


こうなったら、ハッキリ言うしかないのかもしれない。

その結果…安以に嫌われてしまったとしても。


「2人の姿は見えなくて。でも、こうやって閉め切られたカーテンの中から…2人の声は聞こえたんだ」


その時の情景を思い出し。

そして、それを本人である安以に伝えるというこの状況に。


俺は…ひどく緊張していた。


どうやって話せばいいんだろうか。

どこまで話していいんだろうか。


よく分からないまま言葉を口にしてしまう自分が、ある意味怖かった。


安以に、嫌われてしまうかもしれないのに……。


「確かに、ここのベッドで肩を揉んでもらってましたよ?」


「本当…なのかな?」


違っていて欲しい、と願っているはずなのに。

誤魔化されている気がして、どうしても疑ってしまう。
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