天使のような笑顔で
「そう…なるよね」


俺達は、両想いだったんだ。


俺が変な誤解さえしなければ、こんな廻りくどい事にならずに済んだだろうに。

でも、考えてみたら……。


俺が変な誤解をしなかったら、こうやって告白なんてしてただろうか?

もしかしたら、ずっと“親友”のポジションのままだったんじゃないだろうか?


結果オーライだったのかもしれないな。

まぁ、安以をこんな目に遭わせたのは申し訳ないけど。


「ケガの功名ってやつですね」


ベッドの上の安以は、そう言って笑っていた。

痛々しい顔をしているはずなのに、その笑顔がとても輝いて見えて。


俺は…自然と引き寄せられていた。


「……」


「……」


15年間生きてきて。

今まで、彼女なんて作った事なんてないから。


もちろん、これが俺にとってのファーストキスになるんだけど。

キスしたい、なんて思った事も無いから。


自分がこんなに手の早い男だなんて、思いもしなかった。


安以の柔らかい唇から離れた瞬間、ふと我に返って。

どっと後悔が押し寄せてきた。
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